書きだめ。書き溜まり。

読書と筋トレをしながら考えてみた

『石川くん』枡野浩一_0013

この本は、朝倉世界一さんが表紙と挿絵のイラストを描いているということで、もうジャケ買いというか表紙買いというかたちで購入した。

 

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もちろん作者が升野さんだったということもあるが(もうしわけ)、朝倉さんの漫画が好きで『デボネア・ドライブ』とか『フランス県こわい城』などは、何度も読んだ。朝倉さんはもうダメな人を書くのが上手というか、絵の雰囲気がもうダメな人感が溢れてて好きだ。笑


そして、今回読んだ『石川くん』。やっぱり彼も、ダメな方の人間でして。
そのダメ感が、朝倉さんのイラストとマッチしてしまっているこの本はとてもいい。


ちなみに、この本の『石川くん』というのは、『石川啄木さん』のこと。
かの有名な『石川啄木さん』を『石川くん』などと呼び捨てにするなどなんたる不敬!!となる人もいるかもしれないが、読めばわかる。「あーこれは、石川くんですね」となる。場合によっては「『おい石川』なんかでも良かったのでは?」となるかも知れないが、人としての可愛らしさみたいなものが溢れている啄木さんのことをみんなはどうも『石川くん』と呼んでしまう。
そんな感じに、知らなかった『石川啄木』をグッと近づけてくれて、近くなり過ぎたところでも嫌いにならない『石川くん』という落とし所をこの本は用意してくれている


それは、そもそも石川くんに人間的な魅力があったという事と、升野さんが石川くんの事をぼろかすに言いながら「実はこの人石川くんの事好きなんじゃないか」と思わせるツンデレっぷり、肩の張らない朝倉さんのイラストによる絶妙なバランスによるものではないかと考えている。


ーーー
石川くんは天国か地獄で、
激怒したり泣きぬれたりしてるかもしれないけど、
死んだ人には口がないんだし、
黙っててもらいます。
文句があるなら、生き返ってみてください。
ーーーp15


まぁいろいろ書いたが、石川啄木はダメ人間で石川くんなのである。


ちなみに、本の内容としては、升野さんが「石川くんになった私」で書いた石川くんの短歌の現代口語訳と、解説をして、解説がてら石川くんの事をいろいろと暴露するという内容になっている。


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友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買い来て
妻としたしむ
ーーー
友達が俺よりえらく見える日は
花を買ったり
妻といちゃいちゃ
ーーー


ーーー
一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと
ーーー
一度でも俺に頭を下げさせた
やつら全員
死にますように
ーーー


ーーー
その膝に枕しつつも
我がこころ
思ひしはみな我のことなり
ーーー
ひざまくらしてもらいつつ
俺がふと考えるのは
自分のことだ
ーーー

これらに続く解説、というか暴露は朝倉さんのイラストと一緒にマイルドに読んでいただければ。


■『石川くん』枡野浩一
https://www.amazon.co.jp/dp/408746153X/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_H6ZPCbMHX1985